March 26, 2009

林眞須美さんに面会

 あの和歌山カレー事件から今年で11年目。
名古屋から足を伸ばし大阪拘置所の林眞須美さんに面会する。一日一組しか面会できない。無駄足にならないようにあらかじめ手紙を書いたところ、彼女から「待ってます」と電報がきたのが3日前。
面会の理由はふたつ。弁護団のひとり、安田好弘弁護士から「一度機会があったら自分の目でどういう人物か確認したら」と言われていたのと、2月に東京で開かれた集会での彼女の夫、林建治さんと長男、三女の切実な訴えに真寿美さんは無実では?と思うに至ったのです。

 はじめての拘置所、番号札をもらって携帯をロッカーに入れて、差し入れ品は品目を書き入れて窓口に差し出す。拙本と現金を差し入れる。
知らないことが沢山。メッセージは一切だめとは知らなかった。本に書いた励ましの言葉「一日も早く自由に」というのはダメ、はさみを出されてその部分を切り取る。現金を入れた封筒に同封した激励のメモ、結構かんがえて選んだ、孟子の
「天が人に大任をあたえようとするとき、まずその心を苦しめ、その筋骨をさいなみ、餓えを知らせ、その人が行おうとしていることを混乱させる。かくして、天は人の心を刺激し、性質を来鍛え、その非力を補うのである」もダメ。もう一枚の「御身大切に、神田香織より」も返された。なんというきびしさ!人権なんて全くない。えん罪の人たちはたまらないだろうな〜。

 10分ぐらいの面会時間だったが、ピンクのトレーニングウェアの上下姿の眞須美さん、持ち前の明るさで「初めまして」と。勝ち気だが、人のよさそうなおばちゃん(ごめん)といった印象。(私より年下だけど)。
11年もの拘置所生活。かつて取調官が彼女の顔を殴ったとき、負けずに殴り返し、「一生、出れないようにしてやる」「30年この仕事をやってきた。お前が一番気が強い」と言われたと。最後に「なんでも聞いて」と切なる願い。思わず「今の体重は?」と聞いたら「それだけは勘弁して」。

 こんな気のいい一人の女性を、証拠も動機もないのに死刑にしようとしている。あるのは保険金詐欺と亭主に言われてテレビカメラに向かってホースで水をかけたことだけ。カメラに水をかけた映像が「鬼女」となり、世間体を気にする司法によって「死刑」となるとしたら…。ぞっ〜とする。
施設で耐えた4人の子供たちの苦労を思い、自殺を思いとどまったという彼女のどこからも「鬼女」は見いだせない。

 拘置所を出ると正面の川岸の桜が、寒風に耐えつつつぼみを膨らませていた。眞須美さんもたとえれば花咲き誇る年齢、無実のひとりの女盛りの女性の人権をここまで踏みにじり、死にいたらしめることがどうして許されるだろうか。
えん罪が疑われているの人たちを無視しての「裁判員制度開始」でえん罪の防ぐことができるとは到底思えないのです。