August 29, 2006

やれついでくれ それさしてくれ

有線放送の収録。演目は「母里太平」時間が5分あまるので、マクラにこんなのをふりました。
【落語や講談のマクラやひきごとでよく狂歌、戯れ歌が出て参ります。お酒に関するものも結構ありましておなじみのところでは「酒のない国に行きたい二日酔い また三日目には帰りたくなる」
「酒飲みはやっこ豆腐によくにたり はじめ四角で末がぐずぐず」
これらの狂歌は蜀山人の作といわれていますが。、蜀山人こと太田南ぽはお酒が大好きだったようで沢山お酒に関する戯れ歌をのこしております。
「世の中は 酒と女が敵なり どうか敵にめぐり合いたい」なるほど!
「世をすてて山に入るとも みそ醤油 酒のかよいじ なくて叶はじ」
山に入って仙人のような暮らしをするにしても、みそ醤油はともかく、酒がなくてはとても耐えられない。ある日、南ぽ先生ほろ酔いで歩いていると、知り合いの小間物屋が橋の上で反吐をはいています。周りの人は「食らい酔いだ。食らい酔いだ」とうるさい。そこで南ぽ先生一首詠んだそうです。
「酔い伏して へどを月夜で あるものを 食らい酔い(暗い宵)とは 誰がいうらむ」うまいものです。
戯れ歌はほろ酔い加減だとなおいい文句が浮かぶのかもしれませんね。
講釈師はこうはいきませんで、一杯飲んで高座にあがると、セリフを忘れてしまい仕事になりません。
しかし、南ぽ先生ひとりで飲んでばかりではちょっと寂しい。
「すずめどの お宿はどこかしらねども ちょこっとござれ ササの相手に」
ほのぼのとした情景が浮かびます。
これが講釈師ですと「すずめをば、焼いて食いたい ささのつまみに」(字足らず)となってしまう。
それでも禁酒を誓ったこともあったそうです。友人に禁酒をした一首を送ります。
「黒金の 門よりかたき わが禁酒 ならば手柄に 破れ朝日奈」
ところが数日後、その友人が訪ねてみるともうべろんべろんに酔っています。
「我が禁酒 破れ衣になりにけり やれついでくれ それさしてくれ」
どうぞ槍で刺してくれ、ついてくれ、お酒もついでについでくれ、と。】
さあ、槍、酒とくれば黒田節。その由来の一席!とうまくネタにはいれることが出来たのも落語家の春風亭栄枝師匠の著書「蜀山人狂歌ばなし」のお陰。師匠、ありがとうございました。